「新しいプロジェクトのアイデアが頭の中にあるけれど、うまく形にできない」「チームやクライアントにイメージを伝えたいのに、ぴったりな画像が見つからない」
そんな経験はありませんか? 企画書やデザインの現場では、コンセプトの「雰囲気」を共有するために「ムードボード」が使われます。しかし、従来の方法ではPinterestやGoogle画像検索で膨大な時間をかけて素材を探し、手作業でコラージュを作る必要がありました。
もし、その作業をAIが肩代わりし、あなたの曖昧なイメージを「言葉」一つでビジュアル化してくれるとしたらどうでしょう。
2025年、GoogleがAI Test Kitchenで公開した『Mixboard(ミックスボード)』は、まさにその夢を実現するツールです。これは単なる画像生成AIではありません。あなたのアイデアの「壁打ち相手」となり、インスピレーションを形にするプロセスを根本から変える可能性を秘めた「AIムードボードアプリ」です。
所有資格:Google AI Essentials
Mixboardとは?Googleが送り出す「アイデア視覚化AI」
結論:AIと「対話」しながらムードボードを作るツール
Mixboardより引用
Mixboardとは、Googleが開発したAI搭載のビジュアルアイデアボード(ムードボード)作成ツールです。現在はGoogleの実験的なAI機能を試せるプラットフォーム「AI Test Kitchen」にて公開されています。
従来のムードボード作成が、既存の画像を「集めて貼る」作業だったのに対し、Mixboardはユーザーが入力したテキスト(プロンプト)に基づき、AIがその場で新しい画像を「生成」し、ボード上に配置してくれるのが最大の特徴です。
「ムードボード」の概念を変えるAIの力
そもそもムードボードとは、プロジェクトのコンセプト、デザインのトーン&マナー(トンマナ)、雰囲気などを伝えるために、関連する画像やテキスト、配色などを一枚のボードにまとめたものです。
Mixboardは、このプロセスに強力なAI(Nano BananaエンジンというGoogleの最新モデルが搭載されていると言われています)を組み込みました。
例えば、「植物に囲まれた、静かな読書スペース」と入力するだけで、AIがそのテーマに沿ったインテリアの画像、関連する配色、テクスチャのイメージなどを瞬時に複数生成し、ボード上に並べてくれます。
これにより、デザイナーやクリエイターでなくても、自分の頭の中にある漠然としたイメージを、誰でも簡単に視覚化できるようになったのです。
Mixboardは本当に無料?料金と利用条件
結論:現在は「完全無料」で利用可能
Mixboardの使い方を学ぶ上で、最も気になる点の一つが料金でしょう。
結論から言うと、Mixboardは2025年11月現在、完全に無料で利用できます。
これは、MixboardがGoogleの「AI Test Kitchen」というプラットフォームで提供されている「実験的なプロジェクト」であるためです。Googleは、多くのユーザーにこの新しいAIツールを試してもらい、フィードバックを収集する目的で無料開放しています。
利用に必要なのは「Googleアカウント」だけ
Mixboardを利用するために必要なものは、Googleアカウント(Gmailアカウントなど)ただ一つです。
2025年10月30日以降、利用可能国が大幅に拡大され、日本からもVPN接続などは不要で、お持ちのGoogleアカウントでログインするだけで誰でもアクセスできるようになりました。
ただし、あくまで「実験的」なツールであるため、将来的に機能が変更されたり、Googleの他のサービス(例:Google Workspace)に統合されて有料プランの一部になる可能性はゼロではありません。しかし、「AIによるアイデア整理」という新しい体験を無料で試せる今のうちに、ぜひ触っておくことをおすすめします。
【画像で解説】Mixboardの基本的な使い方
Mixboardの魅力は、その直感的な操作性にあります。ここでは、アカウントへのアクセスから基本的なボード作成、編集までの一連の流れをステップバイステップで解説します。
ステップ1:AI Test Kitchenへのアクセスとログイン
まずはMixboardにアクセスします。
Googleアカウントでのログインを求められるので、普段お使いのアカウントでログインしてください。インターフェースは英語ですが、操作は非常にシンプルなので心配ありません。
「Get started」を押下します。

ステップ2:プロジェクト開始とプロンプト入力
ログインすると、プロジェクト一覧画面が表示されます。「New project(新規プロジェクト)」をクリックして、真っ白なキャンバス(ボード)を開きましょう。
画面の上部(または下部)にプロンプト(指示文)を入力するバーがあります。ここに、あなたが作りたいムードボードのテーマを「言葉」で入力します。
プロンプト例:
レトロフューチャーなキャンディーショップのブランドイメージ。ソフトなネオンピンクとブルー。禅(Zen)をテーマにしたミニマルなオフィスの内装サマーウェディングのテーブルコーディネート、テーマカラーはピーチとグリーン
ステップ3:AIによる画像生成とボードの確認
プロンプトを入力して実行(Enterキーまたは生成ボタン)すると、AIが数秒から数十秒ほど考えた後、ボード上に一度に複数(最大20枚程度)の関連画像を生成・配置します。


たくさん出てきました!

この時点でもう、あなたの漠然としたイメージが「ムードボード」として視覚化されています。生成された画像は「ブロック」として扱われ、ドラッグ&ドロップで自由に位置を動かしたり、拡大・縮小したりできます。
ステップ4:自然言語で編集・修正する(Mix機能)
Mixboardの真骨頂はここからです。生成された画像が気に入らない場合、プロンプトを再入力する必要はありません。
ボード上の画像を選択したり、あるいは何も選択せずに、チャットで会話するように自然言語(日本語プロンプトにも対応)で追加の指示を出せます。
編集プロンプト例:
- (特定の画像を選んで)
これをもっと明るくして- (2つの画像を選んで)
この2つのスタイルをミックスして- (ボード全体に)
もっとミニマルな雰囲気にして右上の画像に似たバリエーションを5つ作って
このように、AIと「壁打ち」しながら、思考のリズムを一切崩さずにアイデアを洗練させていくことができます。
気になる画像をタップすると、バーが出てきます。

バーの定義と仕様はそれぞれ以下のとおりです。

組み合わせたい、画像を「Shift」を押しながら、選択します。

その上で、プロンプトを入力し、生成させます。

すると、MIXされた画像ができました。あまりにも適当でしたので、違和感がありますがそれでも大分自然な和洋折衷の空間ができましたよね。

ステップ5:画像のアップロードとバリエーション展開
※20251110現在アップロード機能がうまくいきません。改善された際にまた、使い方を共有します。
Mixboardは、AIが生成する画像だけでなく、あなた自身の手持ちの画像(写真、ロゴ、参考画像など)をアップロードしてボードに配置することも可能です。
さらに強力なのが、アップロードした画像を基にAIが新しい提案をしてくれる機能です。例えば、あなたがデザインしたTシャツのロゴ画像をアップロードし、AIにこう指示してみましょう。
(アップロード画像を選択して)プロンプト例:
このデザインを使って、Tシャツのモックアップ画像を作ってこのロゴを使って、他の職業(例:ゲーマー、エンジニア)のバリエーションを作って
以下をもとに自分だけのTシャツを作成してみます。
アップロードは左のサイドバーを押下します。

AIは指示を理解し、ロゴのテイストを保ったまま新しいバリエーションを瞬時に生成します。これは、ECサイトの商品開発や広告クリエイティブ作成において、絶大な時間短縮効果を発揮します。
【業界別】Mixboardの具体的な活用事例
Mixboardは単なるお絵かきツールではなく、実務のあらゆる「アイデア出し」の現場で活用できます。ここでは、ユーザーから指定された業界を含む、具体的な活用事例を紹介します。
不動産・インテリア:理想の空間を「言葉」でデザイン
課題:
顧客が持つ「理想の部屋」のイメージは非常に曖昧です。「北欧風で、温かみがあって、でもスッキリした感じ」といった言葉を、具体的な内装デザインに落とし込むのは困難でした。
Mixboardの活用:
Mixboardを使えば、顧客の目の前でプロンプトを入力し、即座にビジュアルイメージを生成できます。「北欧風のリビング、オーク材の床、観葉植物多め」と入力してボードを作成。



顧客が「あ、植物はこんなに多くなくていいかも」と言えば、その場で「植物を少し減らして、代わりにアートポスターを壁にかけて」と追加指示。このように、AIを介して顧客とデザイナーの認識をリアルタイムですり合わせることが可能になります。
ファッション・アパレル:コンセプトの具体化とバリエーション展開
課題:
新しいコレクションのシーズンテーマ(例:「90年代グランジと現代の融合」)を決めた後、それを具体的なアイテムデザインやルックブックの雰囲気に落とし込むためのビジュアル資料集めは大変な作業でした。
Mixboardの活用:
テーマをプロンプトとして入力し、まずはムードボードを自動生成させます。AIが生成した画像(チェック柄、ダメージデニム、ルーズなシルエットなど)を見ながら、チームで「この方向性だね」と確認。


さらに、「このジャケットのデザインで、素材をレザーに変えたバージョンが見たい」といった指示を出すことで、手描きやPhotoshopでの合成作業なしに、デザインのバリエーションを高速で検討できます。
MixboardはPinterestやMidjourneyと何が違うのか?
Mixboardの登場により、クリエイティブツールの勢力図は大きく変わるかもしれません。ここで、既存の人気ツール「Pinterest」および「Midjourney(他の画像生成AI)」とMixboardが、それぞれどのような役割を担うのかを比較整理します。
| ツール名 | 主な役割・得意領域 | Mixboardとの決定的な違い |
|---|---|---|
| 既存画像の検索・収集 (インスピレーション探し) |
Mixboardは「探す」のではなく、無いものをゼロから「生成」する | |
| Midjourney / DALL-E 3 | 高品質な1枚絵の生成 (最終成果物の作成) |
Mixboardは「単体」ではなく、複数の要素で全体の「構成・ムード」を提案する |
| Google Mixboard NEW | アイデアの視覚化・構成 (創造の中間プロセス) |
「生成」と「構成」を同時に行い、アイデア出しを高速化する「壁打ち役」 |
比較1:Pinterestとの違い(収集 vs 生成)
Pinterestは「既存画像の検索・収集(キュレーション)」ツールです。
世界中のWeb上にある膨大なビジュアルから、自分のインスピレーションに合うものを探し出し、ピン(保存)して自分のボードに集めます。あくまで「すでにあるもの」を探す作業であり、運や検索スキルが求められます。
対して、Mixboardは「AIによる画像の新規生成」ツールです。
あなたの頭の中にあるイメージを言葉にすれば、AIが「まだこの世にない、あなただけのイメージ」をゼロから生み出してくれます。「探す」手間と時間を完全にショートカットできるのが最大の強みです。
比較2:Midjourneyとの違い(単体 vs 構成)
MidjourneyやDALL-E 3は「高品質な1枚絵(単体画像)の生成」に特化しています。
非常にリアルで芸術的な「最終成果物」としての画像を1枚ずつ生成するのは得意ですが、それらの画像を組み合わせてレイアウトし、全体の「雰囲気」を構成するのはユーザーの仕事でした。
対して、Mixboardは「ムードボード(構成・配置)」に特化しています。
一度に複数の画像(ロゴ、配色、テクスチャ、シーンなど)を生成し、それらを自動でボード上に配置して「全体のトーン」を提案してくれます。「高品質な1枚」よりも、アイデアの「たたき台」や「バリエーション」を大量に比較検討するプロセスに最適化されています。
Mixboardが埋める「創造の中間地点」
このように、Mixboardは「インスピレーションの収集(Pinterest)」と「最終的な1枚絵の作成(Midjourney)」という両極端の間にあった、最も時間のかかる「創造の中間地点(=アイデアをこねて、方向性を定め、視覚化するプロセス)」をAIの力で埋めるツールと言えます。
思考のリズムを止めずに「アイデア出し」と「視覚化」を高速で行き来できることこそが、Mixboardの革新的な価値です。
Mixboard利用時の注意点と日本語対応
非常に強力なMixboardですが、利用にあたってはいくつかの注意点があります。特に「実験的なツール」であることは常に念頭に置いておく必要があります。
日本語での使い勝手は?(UIとプロンプト)
2025年11月現在、Mixboardのインターフェース(メニューやボタン)は英語のみとなっています。
しかし、最も重要なプロンプト(指示文)の入力は、日本語に完全対応しています。
「使い方」のセクションで紹介したような「もっと明るくして」「バリエーションを作って」といった自然な日本語の指示を、AIは高い精度で理解し、実行してくれます。
英語アレルギーがある方でも、直感的な操作と日本語プロンプトのおかげで、数分触ればすぐに慣れることができるでしょう。
商用利用と著作権の現状(2025年11月時点)
MixboardはAI Test Kitchenの規約に基づき、「実験的(ベータ版)プロジェクト」として提供されています。
現時点での規約では、「個人利用」や「アイデア共有」が主な利用目的とされています。AIが生成した画像の著作権の扱いや、商用利用の可否については、他の生成AIサービス同様、まだグレーな部分や議論の途上にある部分が多いのが実情です。
(活用事例で紹介したような)社内のアイデア出しやコンセプト共有に使うのは問題ないと思われますが、AIが生成したビジュアルをそのまま最終的な商品や広告デザインとして無加工で利用する場合は、最新の利用規約を必ず確認し、法的なリスクを慎重に判断する必要があります。
あくまで「実験的」ツールであること
Mixboardはベータ版であるため、以下のようなリスクが伴います。
- 予期しないエラーやバグが発生する可能性がある。
- 機能が突然変更、または廃止される可能性がある。
- 作成したボードのデータが長期的に保存される保証はない。
大切なプロジェクトで作成したボードは、万が一に備えてスクリーンショットを撮っておくなど、ローカル環境でのバックアップを心がけると安心です。
まとめ:Mixboardは「アイデア出し」の革命ツール
この記事では、Googleの最新AIムードボードアプリ「Mixboard」の使い方、活用事例、そして他のツールとの違いについて詳しく解説しました。
Mixboardの要点:
- 無料で使える(Googleアカウントが必要)。
- 日本語プロンプトに対応(UIは英語)。
- 「探す」のではなく、AIがイメージを「生成」してくれる。
- 「もっとこうして」と自然言語で対話しながら編集できる。
- アイデア出しと視覚化の「中間地点」を埋める革命的なツール。
Mixboardは、デザインの専門家でなくても、誰もが自分の頭の中にある創造的なアイデアを簡単に視覚化できる時代が来たことを告げています。
まだ実験的なツールではありますが、この「AIとの壁打ち」という新しい体験は、あなたの企画書作り、デザイン作業、ECサイト運営を間違いなく加速させます。利用は無料です。まずは遊び感覚で、あなたの「妄想」をMixboardにぶつけてみてはいかがでしょうか。
趣味:業務効率化、RPA、AI、サウナ、音楽
職務経験:ECマーチャンダイザー、WEBマーケティング、リードナーチャリング支援
所有資格:Google AI Essentials,HubSpot Inbound Certification,HubSpot Marketing Software Certification,HubSpot Inbound Sales Certification
▼書籍掲載実績
Chrome拡張×ChatGPTで作業効率化/工学社出版
保護者と教育者のための生成AI入門/工学社出版(【全国学校図書館協議会選定図書】)
突如、社内にて資料100件を毎月作ることとなり、何とかサボれないかとテクノロジー初心者が業務効率化にハマる。AIのスキルがない初心者レベルでもできる業務効率化やAIツールを紹介。中の人はSEO歴5年、HubSpot歴1年





