人工知能の世界に革命をもたらす新たな大規模言語モデル(LLM)が登場しました。Moonshot AI社が開発した「Kimi k1.5」は、強化学習(RL)を用いて訓練された多モーダルAIモデルで、数学やコーディングなどの複雑なタスクにおいて驚異的な性能を発揮しています。
Kimi k1.5は、GPT-4oやClaude Sonnet 3.5といった既存の短いChain-of-Thought(CoT)モデルを大幅に上回る性能を示し、最大で550%もの改善を達成しました。
さらに、長文脈処理能力、改良された方策最適化、マルチモーダル能力など、革新的な特徴を備えています。本記事では、この画期的なAIモデル「Kimi k1.5」の特徴や使い方を詳しく解説していきます。
この記事はこんな人におすすめ
・無料で使えて、ChatGPTよりも優秀な「Kimi k1.5」がSNSで話題で気になる
Kimi k1.5とは?
Moonshot AIより引用
Kimi k1.5は、Moonshot AI社が開発した最新の大規模言語モデル(LLM)です。このモデルの特徴は、強化学習を用いて訓練されていることで、従来の次トークン予測による事前学習の限界を超えています。
Kimi k1.5は、最先端の多モーダル言語モデルで、強化学習(RL)を用いて訓練された革新的なAIシステムです。このモデルは、数学や coding などの複雑なタスクで優れた性能を示し、GPT-4o や Claude Sonnet 3.5 を大幅に上回る結果を達成しています。
Kimi k1.5の特徴
Moonshot AIより引用
- 長文脈スケーリング: 128,000トークンまでの長い文脈を処理できます。
- 改良された方策最適化: オンラインミラー降下法や効果的なサンプリング戦略を採用しています。
- マルチモーダル能力: テキストと画像の両方を理解し、推論できます。
- 優れた推論性能: AIME、MATH 500、Codeforces、MathVistaなど、複数のベンチマークで最先端の結果を達成しています。
- 人間の学習過程に似たトレーニングシステム: 長い課題を効率的に分割して処理する「Partial Rollout」。
Kimi k1.5の革新的な特徴について、以下より詳細解説します。
1. 長文脈スケーリング (Long Context Scaling)の詳細
Kimi k1.5の最も注目すべき特徴の一つは、128,000トークンまでの長文脈処理能力です。この機能の重要性は以下の点にあります。。
- 効率的な部分ロールアウト訓練: 長い文脈を効率的に処理するため、部分的なロールアウトを活用した訓練方法を採用しています。これにより、計算リソースを効率的に使用しながら、長文脈での学習が可能になっています。
- 実用的な応用: 長文脈処理能力により、複雑な数学の証明、長いコードの分析、詳細な技術文書の理解など、より実践的なタスクに対応できます。
2. 改良された方策最適化
モデルの性能向上のために、以下の革新的な最適化手法を導入しています。
- オンラインミラー降下法: 従来の勾配降下法を改良し、より効率的な学習を実現
- 効果的なサンプリング戦略: より質の高い学習データの選択を可能に
- 長さペナルティの導入: 出力の質と長さのバランスを最適化
特筆すべきは、これらの改良がモンテカルロ木探索※1や価値関数※2、プロセス報酬モデルなどの複雑な技術に依存せず、シンプルかつ効果的なフレームワークを確立している点です。
※1 モンテカルロ木探索(MCTS)は、将棋や囲碁のAIが次の手を選ぶときに使う思考方法です。まず、現在できる手をすべて見つけ出し、それぞれの手について「もしこの手を選んだら」という未来をシミュレーションします。このシミュレーションを数千回から数万回と繰り返し、最も勝率が高そうな手を選びます。人間の直感的な「この手が良さそう」という判断を、大量のシミュレーションで代替する手法といえます。コンピュータは1秒間に膨大な数のシミュレーションを行えるため、効率的に最適な手を見つけることができます。
※2 価値関数とは「これはどのくらい良い選択なのか」を数値で表す仕組みです。たとえば、将棋AIが「この駒の配置は勝率60%」と判断するときに使う計算式のようなものです。人間で例えると、お買い物で「この商品は3000円の価値がある」と判断する時の価値判断基準に似ています。
3. ベンチマーク性能の詳細分析
Kimi k1.5は複数の重要なベンチマークで顕著な成果を上げています。
- AIME: 60.8点を達成(short-CoT)
- MATH-500: 94.6点を記録(short-CoT)
- LiveCodeBench: 47.3点を獲得(short-CoT)
- MathVista: 視覚的数学推論での高いパフォーマンス
特に注目すべきは、これらのスコアがGPT-4oやClaude 3.5 Sonnetと比較して最大550%の性能向上を示している点です。
4. マルチモーダル能力の特徴
テキストと画像の両方を理解し、統合的な推論を行う能力を持っています。
- 視覚的数学推論: MathVistaでの高いスコアが示すように、数学的問題における視覚的要素の理解と処理が優れています
- クロスモーダル推論: テキストと画像の情報を組み合わせた複雑な推論タスクに対応
以上の特徴から、Kimi k1.5は特に数学的推論、コーディング、視覚的理解の分野で優れた性能を発揮する次世代AIモデルと評価できます。その革新的なアプローチと実践的な性能は、AI技術の新たな可能性を示唆しています。
5. 人間の学習過程に似たトレーニングシステム
Kimi k1.5のトレーニングシステムは、人間の学習過程に似た仕組みを持っています。教室で生徒が学ぶように、AIも様々な課題に取り組みながら知識と能力を高めていきます。
このシステムの中心となるのは、実際に問題を解くRollout Workersと、その解答を評価する複数の専門家的な評価モデルです。例えば数学の問題を解いたとき、数学の専門家モデルがその正確さを判断し、プログラミングの課題ではコードの実行結果を確認します。さらに画像を含む問題では、視覚的な理解力も評価されます。これはちょうど、様々な教科の先生がそれぞれの専門分野で生徒を指導するような仕組みといえるでしょう。
特に注目すべきは、長い問題に対する取り組み方です。人間が長い小説のレポートを書くとき、章ごとに区切って考えるように、このシステムも長い課題を効率的に分割して処理します。この「Partial Rollout」と呼ばれる手法により、限られたリソースでも複雑な問題に対応できるようになっています。
また、過去の良い解答例はReplay Bufferに保存され、後の学習に活用されます。これは人間が過去の問題集や模範解答を参考にしながら学習を進めることに似ています。このように過去の経験を効率的に活用することで、学習効果を最大化しています。
Kimi k1.5の技術的な革新性と優れた性能は、強化学習を用いた大規模言語モデルの訓練における重要な進歩を示しています。この技術は、より高度な人工知能システムの開発に向けた新たな可能性を切り開くものと言えるでしょう。
Kimi k1.5は無料?
Kimi k1.5は現在、無料で利用可能です。登録しなくても使える状態となっており、かなり簡単に使えます。
Kimi k1.5の使い方
Kimi k1.5はとても簡単に使えます。アプリとブラウザがありますが、ブラウザの方を紹介します。
・Kimi k1.5 へアクセス
こちらで準備は完了です。
※ただし、登録しないとチャット入力画面以外の機能は使えませんので登録はMUSTといえるでしょう。
「Login to chat with Kimi」を押下
日本を選択し、電話番号を入力します。
最後に認証コードを設定すれば登録完了です、色んな機能が使えるようになっています。
Kimi k1.5の二つのバージョンには、それぞれ重要な特徴と用途の違いがあります。
通常版の「Kimi」は、日常的なタスクや一般的な利用に最適化されています。文章生成、質問応答、簡単なコーディング、基本的な画像理解など、幅広いタスクをバランス良くこなすことができます。処理が比較的速く、効率的なレスポンスが得られるため、多くのユースケースで実用的な選択肢となります。
例えば「万有引力について説明して」と質問を投げかけてみました。
ちゃんと返してくれました。
ただし、少し回答が遅いと感じます。
一方、「k1.5 Loong Thinking」は、より複雑な推論を必要とするタスクに特化しています。長い文脈を活用した深い思考プロセスを実行でき、特に視覚的要素とテキストを組み合わせた複雑な推論が得意です。例えば、数学的な証明、詳細なコードレビュー、複雑な画像分析などの高度なタスクで真価を発揮します。ただし、より多くの計算リソースと時間を必要とします。
「k1.5 Loong Thinking」が皆さんが求めているモデルでしょう。
モデルを変更し
「Googleの順位上昇につながるSEOシグナルを調べて教えて」と聞いてみました。
検索し始めました・・・
まあまあいい感じの回答を出してくれました。これが無料はすごい。
※以下の「Online」を押下しないとインターネットで検索してくれないので注意が必要です。
実際に画像をどれほどの精度で読み取ってもらえるのかも試してみました。
厚生労働省より引用
日本のデータでもしっかり分析してくれます!
Kimi k1.5とDeepSeekはどちらが優秀?
Kimi k1.5は、複数のベンチマークで優れた性能を示しています。特に、短いChain-of-Thought(CoT)推論タスクでGPT-4oやClaude Sonnet 3.5を大幅に上回る結果を達成しています。しかし、DeepSeekとの直接的な比較データは提供されていないため、どちらが優秀かを断定的に述べることは難しいです。が!コーディング対決をさせてみようと思います。
DeepSeekについては以下の記事をご覧ください。
DeepSeek R1とは?使い方、料金、ChatGPT o1と比較まで徹底解説
「ビールジョッキのローディングアニメーションのコードをワードプレスのカスタムhtml用に作成して」と入れてみました。
上は「DeepSeek」下は「Kimi k1.5」です。
使ってみた所感としては「DeepSeek」に軍配が上がりそうです・・・。
まとめ
Kimi k1.5は、強化学習を用いて訓練された革新的な多モーダル言語モデルです。長文脈処理能力、改良された方策最適化、マルチモーダル能力を特徴とし、複数のベンチマークで最先端の性能を示しています。現在は無料で利用可能です、
趣味:業務効率化、RPA、AI、サウナ、音楽
職務経験:ECマーチャンダイザー、WEBマーケティング、リードナーチャリング支援
所有資格:Google AI Essentials,HubSpot Inbound Certification,HubSpot Marketing Software Certification,HubSpot Inbound Sales Certification
▼書籍掲載実績
Chrome拡張×ChatGPTで作業効率化/工学社出版
保護者と教育者のための生成AI入門/工学社出版(【全国学校図書館協議会選定図書】)
突如、社内にて資料100件を毎月作ることとなり、何とかサボれないかとテクノロジー初心者が業務効率化にハマる。AIのスキルがない初心者レベルでもできる業務効率化やAIツールを紹介。中の人はSEO歴5年、HubSpot歴1年